〜夏休〜

何処からともなく聞こえてくる、祭囃子の笛の音が胸に響く夜。
朧げだった風景が脳を掠め、涼やかな夏の終わりを感じるひと時。
夏祭りを鮮やかに彩る、ある意味でネオンにも似た光は、少年の瞳には少し眩しすぎた。
鳴り止まぬ花火の下を潜り、逸れぬように夢中で背中を追いかけた夜。
群れをなす屋台の数だけ、それぞれの夢があると信じていた頃を思い返すと、少し、恥ずかしい気持ちになる。
果たして自分は、何を手に入れたのか。
そして、何を失ったのか。
蝋石でアスファルトに描いた意味の無い落書き。
夏休みに祖母の家で宿題をし、そのあとの昼寝で汗をかきながら見た悪夢。
蒸し返るような茹だる日差しの中で、石段をひたすらに踏みしめた午後。
蝉が、ただ、ひたすらに、鳴いていた。
つまるところ、身体中の体温が総て無くならない限り、人の生命は継続していくのかも知れない。
だけど、たまに、思う。
あの頃には、もう戻れない。
あの夏には、もう二度と帰れない。
だってもう既にアラフォーのオッサンですから、わははははははははは。
すみません、色々とぶち壊したくなるお年頃なんです。
