〜背中〜

父は高校時代、ウエイトリフティングでインターハイ2位の実績がある。
その当時、競技人口は少なかったと思われるが、それでも充分に誇れる成績だ。
そんな父だが、その時代の話をほとんどしない。
あれだけ自慢話や昔話が好きな人なのに、なぜかしない。
聞くところによると、インターハイ終了後、松浦農園2代目農家である父親(僕の祖父)に、一言、こう言われたらしい。
「遊びは終わったから、早く畑に出ろ」
祖父は生まれつき身体が弱くて、よく、父のことを農作業の労働力として頼りにしていたようだ。
今現在、僕が見る限り、父は確かに農業が好きだ。
高齢者と言われる年齢に差し掛かっても、農業技術を勉強する意欲は衰えない。
しかし、たまに思う。
「父」は「農業」を「好きにならざるを得なかった」のではないかと。
当たり前の事を当たり前にこなしているだけでは、ウエイトリフティングで全国2位なんて、とてもなれない。
そして、好きじゃなければ、そんなハードなトレーニングに耐えられるはずがない。
もし、仮に、祖父の身体が頑丈だったら。
もし、仮に、父が農業を継がなかったら。
自由を不自由に生きることが美徳とされる時代を生き抜いてきた、父の背中から学ぶもの。
うまく言えないけれど、確かに、ある。
